ワンルームディスコフィーバー
高級レトルトカレーが欲しい。
なにせ日頃はロハコやamazonでやっすい4食セットのやつを通販しているのです。
(この書き出しの時点でもう怒られそう)
森見登美彦的な響きのキーワード(エリア違い)とは裏腹に、キラキラもわびさびもないフツーの学生生活をしていました。
当時まだキラキラ女子なんて言葉はありませんでしたが、周りは輝いて見えました。合コンとかイベントとか。
ちなみに私は大学生活のうちについぞ合コンに行くことはなく、案の定彼ピッピはいませんでした。当時それは形而上学的な存在でした。
しかし大学での勉強やサークル、アルバイトはとても楽しかったので、合コン処女とはいえ当時の思い出に不満はありません。
学生の一人暮らしの楽しみはいろいろあります。
100円均一でかわいい雑貨を買ってみたり、スーパーで食材を前に悩んでみたり、夜にふとコンビニに行ったり、友達を呼んで夜通しおしゃべりしたり。
高校までは実家で親に頼っていたことも、全て自分の自由にできるわけです。ゼルダの伝説BotWくらい自由です。やったことないけど。
自由に使える時間が増えて、中でもハマったのはカラオケでした。
友人と行くカラオケも、一人カラオケも大好きでした。心の広い友人に恵まれたおかげで、アニソンも歌謡曲も球団応援歌も、なんでもアリのカラオケの混沌とした楽しさの虜になったのです。
とりわけハマったのがperfumeです。「NIGHT FLIGHT」がリリースされたくらいから、ポップで独特なダンスに夢中になりました。
こんなかわいいダンス、歌って踊るしかないわけです
陰キャは思いました。のっちかしゆかあ〜ちゃんに混ざりたい……!
カラオケで思う存分歌って踊るために、youtubeの解説動画を見ながら6畳間ですったもんだ練習します。運動部の経験がなかったので、ちょっとの練習ですぐに筋肉痛になります。なにせ難しいんだもの。
しかし私は(私の脳内では)4人目のperfume。こんなことで音を上げるわけにはいかないのです。3人に申し開きが立たないからーー
ある日、ポストに1枚の紙が入っていました。
「毎晩あなたの部屋から歌が聞こえてきます。非常に迷惑です。アパートはあなただけのものではないことを良く考えてください。今後も続くようであれば管理会社に連絡します。」
今でもよく覚えています。A4用紙にMS明朝10.5ptで文が印字されていたことを。多分これ大学の図書館かどっかで刷ったな。
人間、衝撃的なものに出会うと、メインの情報より他のものの方が入ってくるもののようで、クレームが来たことのショックより、毛羽立った柔らかな切り口の余白のほうが気になりました。手で切ったんだな、と思いながら、何食わぬ顔で階段を上ります。
部屋に帰ってから、ようやく心臓がばっくんばっくん鳴り、顔が真っ赤になりました。顔は熱いのに体が急に冷えて、人生で初めて「これが冷や汗か」と実感しました。紙は二度見ることもなく、すぐに捨てました。
その日を境に、4人目のperfumeを辞めました。
perfumeは見て聞いて楽しむもの。
アパートは静かに過ごすもの。
思えば、隣の部屋とうちの部屋のテレビが「ズームイン!」て朝からハモって、隣の人も占い見てたんだなって分かる程度の壁の薄さでした。
階下にしても、ベットで横になっていると、下の部屋で宴会している人数を想像できる(男女の声を複数聞き分けられる)程度には聞こえていました。
隣人か階下か、誰からのクレームだったのかは無記名のため分かりませんが、彼らからのアプローチが壁ドンや突撃でなかっただけ優しかったです。
突撃されてたらちびって実家帰ってたかもしれません。
あのときの人へ。その節はごめんなさい。あなたのおかげで、早いうちに大切なことに気づけました。
あれから私は静かに過ごしています。
あと今でもperfumeファンです。
一人暮らしするときは、ワンコ聞いて元気出してください。名曲なので。